合同会社NanoSiC NanoPow

補体について (6)

2021年11月2日

補体系が関わる病気 5

Rheumatoid Arthritis
~ 関節リウマチ ~

関節リウマチは長期に渡って進行し身体機能に障害をもたらす自己免疫疾患です。日本での患者数は70万人以上、世界ではおよそ2300万人と推定されています。関節リウマチは女性に多く、その患者数は男性のおよそ3倍とみられています。どの年代でも発症しますが、一般的には30代から50代に多く見られます。関節リウマチは羅患率が高く、大部分の患者は日常生活に支障をきたしています。発症後5年で発症した方のおよそ33%が離職、10年後ではおよそ半数の方が相当な機能障害を引き起こしています。

関節リウマチには既知の治療方法はまだありませんが、症状を緩和させたり、症状を改善し病気の進行を遅らせたりする様々な対処療法があります。1 主要な製薬企業から以下の治療製剤が提供されています。(この情報は2017年現在のものです)

Embrel (Amgen/Pfizer)、 Remicade and Simponi (Centocor Ortho Biotech)
Humira (Abbott)、Cimzia (USB Group)、Rituximab (Roche)、Orencia (Bristol Myers Squibb)等。

米国での関節リウマチに関わる医療費の合計は間接費用や労務障害も含めると年間200億ドルを超えます。2

画像による診断の組み合わせや血液検査、理学的所見が関節リウマチの診断に使用されます。米国リウマチ学会(American College of Rheumatology:ACR)は、以下の基準を定めており、そのうち少なくとも4つの基準を満たしている場合は関節リウマチとみなされます。3

1965年、Schubartらは、関節リウマチの活動期に血清補体濃度が大きく変動することを示しました。4
Verseyらは、関節リウマチ患者では、補体変換(C3とC4の分解)が健常者よりも頻繁に起こることを示しました。5
また血清、滑液、滑膜組織中の補体成分C3、C3a、C5a、TCC(C5b-9)の濃度が高いことも報告されています。6-8
更にC1q-C4複合体の上昇が、疾患活動性と相関していることがわかっています。9
補体の活性化は、II型コラーゲン(CII)とCII自己抗体からなる免疫複合体によって(少なくとも一部は)誘導されると考えられています。10
滑膜組織における局所的な補体生成を特異的に調節または阻害することは、RA治療の有効なターゲットとなりえます。11

現在、補体活性化の成分と、RAに共通する他のタンパク質との相関関係を調べる研究が行われています。
CRPはC3dおよびC4dと複合体を形成し、RA患者ではこれらの複合体のレベルが上昇します。インフリキシマブ(TNF阻害剤)を投与すると、CRPとCRP複合体のレベルが有意に低下します。12
ACPAは古典的補体経路と代替補体経路の両方を活性化しますが、データは、ACPAの血清レベルが高い場合、古典的補体経路よりも代替補体経路の関与が大きいことを示唆しています。13
Cartilage Oligomeric Matrix Protein (COMP)は、活動性関節疾患(RAなど)の患者の血清中で上昇しているタンパク質ですが、プロペルディンとの相互作用を通じて代替経路を活性化する可能性があります。
COMPは、古典的経路とレクチン経路を阻害することが明らかになりました。COMP-C3b複合体の検出は、RAの早期マーカーとなる可能性があり、早期に治療を行い、広範な軟骨の損傷を回避することが可能となります。14

References

  1. Frequencies of selected diseases and conditions among persons 18 years of age and over, by selected characteristics (Table 7). In:National Health Interview Survey. Centers for Disease Control and Prevention (2008).
  2. Rheumatoid Arthritis. American College of Rheumatology website (www.rheumatology.org). Patient information (2012).
  3. Aletaha, D et al. 2010 Rheumatoid arthritis classification criteria. Arthritis Rheum. 62(9):2569-2581 (2010).
  4. Schubart, AF et al. Serum complement levels in rheumatoid arthritis. Ann Rheum. Dis. 24:439-450 (1965).
  5. Versey, JMB et al. Complement metabolism in rheumatoid arthritis. Ann Rheum Dis. 32:557-564 (1973).
  6. Ruddy, S and Cohen, HR. Rheumatoid arthritis biosynthesis of complement proteins by synovial tissues. N. Engl. J. Med.290:1284-1288 (1974).
  7. Jose, PJ et al. Measurement of the chemotactic complement fragment C5a in rheumatoid synovial fluids by radioimmunoassay: Role ofC5a in the acute inflammatory phase. Ann. Rheum. Dis. 49:747-752 (1990).
  8. Morgan BP. The complement system: An overview. Methods Mol. Biol. 150:1-13 (2000).
  9. Wouters, D et al. Evaluation of classical complement pathway activation in rheumatoid arthritis. Arthritis Rheum. 54(4):1143-1150 (2006).
  10. Watson, WC et al. Assessment of the potential pathogenicity of type II collagen autoantibodies in patients with rheumatoid arthritis:Evidence of restricted IgG3 subclass expression and activation of complement C5 to C5a. Arthritis Rheum. 29:1316-1321 (1986).
  11. Neumann, E et al. Local production of complement protins in rheumatoid arthritis synovium. Arthritis Rheum. 46(4):934-945 (2002).
  12. Familian, A et al. Infliximab treatment reduces complement activation in patients with rheumatoid arthritis. Ann. Rheum. Dis.64:1003-1008 (2005).
  13. Trouw, LA et al. Anti-cyclic citrullinated peptide antibodies from rheumatoid arthritis patients activate complement via both the classical and alternative pathways. Arthritis Rheum. 60(7):1923-1931 (2009).
  14. Happonen, KE et al. Regulation of complement by cartilage oligomeric matrix protein allows for a novel molecular diagnostic principle in rheumatoid arthritis. Arthritis Rheum. 62(12):3574-3583 (2010).
ブログ トップページに戻る