加齢黄斑変性(AMD)は高齢者が目が見えなくなる主な要因で、特にヨーロッパ人に多く見られ、世界中でおよそ3000万人から5000万人が罹患しています。この病気の初期の特徴は、ブルッフ膜と網膜色素上皮(RPE)の間にドルーゼン(Drusen)と呼ばれるリポタンパクが蓄積することです。病気が進行すると次のような2つの非常に重い症状が出てきます。一つは地図状萎縮型(GA, geographic atrophy)あるいはドライ型と呼ばれる症状で、RPE細胞(網膜色素上皮細胞)や網膜細胞が失われるのが特徴です。
もう一方は、脈絡膜新生血管型(chroidal neovascularization、CNV)または滲出型(ウエット型)と呼ばれ、発達した血管がレチナール層に入り込み液の濾出や出血を伴うことが特徴です。1 米国では約175万人がAMD後期と診断され、730万人にAMDの初期兆候が見られます。2 世界保健機構(WHO)は2002年に世界の失明者の8.7%がAMDに起因するもので、1400万人の人がAMDによる失明や重度の視覚障害を抱えています。
ドルーゼン(drusen)の成分の研究は、炎症、特に代替補体経路(AP)の局部的活性化がAMDの発症に関与していることを示しています。補体フラグメントC3、C5及び膜侵襲複合体(MAC、C5b-9)がドルーゼンや色素上皮下及び脈絡膜の毛細血管板内に存在することが確認されています。更に、クラステリン(Clusterin)やヴィトロネクチン(Vitronectin)のような液相制御タンパクもドルーゼンの成分として認められています。4 別の研究は補体H因子(CFH)の遺伝子がAMD発症のリスク増大に関与していることを示しています。5-7 H因子は主に肝臓で合成されますが、網膜色素上皮で局所的に合成される場合もあります。8
H因子は液相における代替補体経路(AP)の主要インヒビターで、宿主細胞に結合し、代替経路補体C3転換酵素(C3bBb)の形成や活動を妨げることでその活性化を阻害します。 補体H因子はI因子によるC3bの不活化のための補助因子となります。補体H因子が存在しない場合、C3bはB因子に結合し、D因子によってBaとBbに分解され、最終的には代替え経路補体C5転換酵素を形成し、続いて補体末端経路の構成成分から膜侵襲複合体(MAC)を形成します。 制御タンパク(H因子、I因子またはD因子)の濃度や活性のわずかな違いが目の中の局部的な補体活性化にまで影響する可能性があります。そのため代替補体経路のごくわずかな活性化により炎症誘発性物質や血管新生物質の局部的な放出されたり、網膜組織が損傷を受けたりし、病気の発症につながっていきます。9
補体システムの特定成分をターゲットにした加齢黄斑変性(AMD)の治療法は多数開発中で、病気の初期段階に効き目があり、AMD後期への進行を妨げる可能性があります。しかしどのような治療方法であっても免疫系における補体抑制(阻害)の全身への影響を最小限にしなければなりません。AMDの管理(抑制)にモノクロナール抗体と核酸アプタマーの使用が提案されています。
Drug | Mechanism of Action | Sponsor | Clinical Study Phase |
POT-4 (Compstatin) | C3 inhibitor | Alcon | Phase II |
ARC 1905 | Aptamer-based C5 inhibitor | Ophthotech | Phase I completed |
Exulizumab (Soliris) | C5 antibody | Alexion Pharmaceuticals | Phase III |
FCFD4514S | Anti-factor D antibody | Genentech | Phase II |
TA106 | Factor B inhibitor | Taligen Therapeutics, Alexion Pharmaceuticals | Pre-clinical development |
JSM-7717 and JPE-1375 | Peptidomimetic C5a receptor inhibitors | EvaluatePharma and Jerini AG, respectively | Pre-clinical development |