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2020年12月の記事

水素吸蔵(保存)化合物

2020年12月10日

水素は地球上でもっとも軽く、また最も多く存在する元素です。水素は燃料自動車が実用化されたときに「水素社会」という言葉とともに次世代エネルギーの一つとして注目されました。
確かに水素は酸素と結びつけて発電したり、燃やして熱エネルギーとして利用できたり、燃焼の際には水ができるだけでCO2を排出しないといったクリーンなエネルギーであり、また単独では存在せず他のいろいろな元素と結びついた状態で存在することから、様々なものをエネルギー資源として利用することが出来るという理想的なエネルギーではありますが、現在の製法では水素を製造する際にCO2を排出するという欠点もあるため、CO2を発生させない様々な製法が開発されてきています。

水素はまたエネルギー密度が非常に低いということから輸送コストの問題、現在の保存容器では水素に腐食されるため長期保存が難しいといった欠点も抱えており水素輸送や水素保存に関しても様々な技術が開発されています。
「水素を含有する化合物に変換 した上で輸送するの」ということも輸送・保存方法のひとつとして考えられます。水素保存材料によって高い体積密度と重量密度による水素の保存が可能になります。しかし高い水素収容能力、低温での脱水素、制御可能な水素放出、高い再生能力などを併せ持つ物質の開発への挑戦は残されています。

Boron Molecular社はオーストラリア、ニューサウスウェールズ州のウーロンゴン大学(the University of Woolongong)とのチームアップで研究者コミュニティーが高品質な水素吸蔵化合物に容易にアクセス出来るようにすることで研究者が正しい候補化合物を探索できるよう支援しています。

Sodium octahydrotriborate (NaB3H8) (BM1607) CAS No. 12007-46-4
Empirical Formula:  NaB3H8 Molecular Weight:  63.4
白色粉末、不活性雰囲気下で約100℃で分解、水と徐々に反応(室温で1週間10%以内)、高い吸湿性、ほとんどのエーテル溶媒によく溶ける

500 Princes Highway Noble Park, Victoria, 3174 Australia
About – Boron Molecular

<アプリケーション>
オクタヒドロ三ホウ酸ナトリウムは水素を多量に含んだ塩で、高溶解性で水に安定です。遷移金属触媒が促進する加水分解によって高純度の水素ガスが素早く放出されます。ボロンに対するナトリウム率が高いと加水分解中にポリボレート複合体の混合物が形成されますが、この准安定な溶液は結晶化が困難です(Fig.1)
難水溶性の加水分解物を形成する傾向があるNaBH4やNH3BH3と比べるとNaB3H8は液相状態でより高い水素保持能力を有しています。液相状態での水素貯蔵は現在の分散系液体燃料技術に対するより高い互換性も持っています。

Fig. 1  NaB3H8の加水分解によるポリボレートの形成

バルキーなB3H8アニオンは水素リッチイオン液体を作る理想的なソースにもなります。NaBH4とは異なりNaB3H8はジエチルエーテルを含むほとんどのエーテル溶剤に容易に溶けるため有機合成において効果的な還元剤となります。NaB3H8は、高い反応性によってホウ素薄膜の作製用途で注目されている他の金属・非金属オクタヒドロ三ホウ酸の重要な前駆物質です。

References:

  1. Z. Huang, G. King, X. Chen, J. Hoy, T. Yisgedu, H. Lingam, S. Shore, P. Woodward, J. Zhao. “A Simple and Efficient Way to Synthesize Unsolvated Sodium Octahydrotriborate.” Inorganic Chemistry, 2010, 49, 8185.
  2. Z. Huang, X. Chen, T. Yisgedu, J. Zhao, S. Shore. “High-capacity hydrogen release through hydrolysis of NaB3H8.” International Journal of Hydrogen Energy, 2011, 36, 7038.
  3. D. Schubert, D. Neiner, M. Bowden, S. Whittemore, J. Holladay, Z. Huang, T. Autrey, “Capacity Enhancement of Aqueous Borohydride Fuels for hydrogen storage in liquids”, Journal of Alloys and Compounds, 2015, 645, S196.
  4. W. Chen, Z. Huang, G. Wu, T. He, Z. Li, J. Chen, Z. Guo, H Liu, P.
    Chen, “Guanidinium octahydrotriborate: an ionic liquid with high hydrogen storage capacity”, Journal of Materials Chemistry A, 2015, 3, 11411
報道通信社より発行されております月刊経営情報誌『Anchor』(アンカー)のインタビューを受けました。インタビューはびわ湖大津館にて行われ、当日のゲストインタビュアーは元光GENJIの大沢樹生氏。経歴や起業に至る経緯、今後の抱負等約40分のインタビューでした。このインタビューの内容はAnchor 8月号の「地域再生─企業は人なり─」に掲載されました。

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